伊江島の海人、生きたリュウグウオキナエビスを捕獲

最近、伊江島の海人が、生きたリュウグウオキナエビスを捕獲しました。

伊江島で捕獲されたリュウグウオキナエビス

伊江島で捕獲されたリュウグウオキナエビス

この写真のリュウグウオキナエビスは、水深160mでの延縄の餌にかかってあがってきました。
海人から連絡を受けて見に行った時にはまだ生きていていて、不思議なことになんの付着もなく、最初からこのように綺麗な状態でした。

リュウグウオキナエビスと湯野川

リュウグウオキナエビスと湯野川

このュウグウオキナエビスは、引き上げた海人が大事に飾っています。

リュウグウオキナエビスって?

オキナエビスガイの仲間は非常に古い系統で、生きている化石と呼ばれています。
かつては化石でしか確認できなかったものが、1986年に初めてカリブ海で生体が確認されました。
クリーム色に黄色やオレンジ、赤っぽい模様があり、最大の特徴は殻にスリットが入っていることです。

このスリットは古代の貝の特徴です。スリットの先端の場所には肛門があり、排泄物を出したり、呼吸のためにあります。
オキナエビスガイの仲間は、英語でスリット・シェル (slit shells)と呼ばれます。

オキナエビスガイ科(Pleurotomariidae)の中で、リュウグウオキナエビス(Entemnotrochus rumphi)は最大の種で、殻の直径は約20㎝になります。
東シナ海からインドネシアにかけて分布しています。

伊江島とリュウグウオキナエビス

リュウグウオキナエビスの生体が初めて採集されたのは伊江島です。

もうかなり前ですが、その時海図に載っていない曽根がありました(現在の海図には新曽根として掲載)。その曽根は水深300mの海底からほぼ垂直に立ち上がり、トップは100mです。

そこで深海刺し網漁が行われていました。
主にウメイロ(ウメイロモドキではない)という魚を目的としたもので、曽根のトップに刺し網を投入し、かかったウメイロを引き上げます。
その網に、初めて生体のリュウグウオキナエビスが引っかかっていたそうです。

伊江島で捕獲された綺麗なリュウグウオキナエビス

伊江島で捕獲された綺麗なリュウグウオキナエビス

この時の貝は写真のようにきれいなものではなく、石灰やいろんなものが付着し、汚いものでした。
しかもオキナエビスガイ特有のスリットが割れているよう見えたため、はじめは捨てようとしたらしいです。

しかし港に持って帰ってみたら、博識の海人がいてこれは貴重なものだとわかり、この貝は100万円で引き取られました。
その後も数個体引き上げられ、そのうちの1個は伊江村の資料館に展示されています。

ちなみに、ダイバーがよく宿泊する民宿渚の、亡くなったお父さん下門吉勝さんも1個つかまえたことがあります。

現在はウメイロの資源量が激減し、深海刺し網は廃れたので、この漁でリュウグウオキナエビスが上がってくることはありません。