ゴールデンウィークに見つかったフカミヤッコ

フカミヤッコはその名の通り、水深の深い場所に住むキンチャクダイの仲間です。
通常の魚はオスの方が派手で人気なのですが、フカミヤッコの場合はオス・メスが全く違った色彩で、黄色のオスよりブルーのメスの方が人気があるようです。

1975年にRandallがキーリング諸島のココス島の個体から、新種の魚Genicanthus bellusとして記載し、2009年に伊江島産の標本から、「フカミヤッコ」という和名が付きました。
和名が付くまでは、ダイバーには英名からオーネイトエンゼル、アクアリストには学名からベルスエンゼルと呼ばれることが多かったと思います。

和名:フカミヤッコ
学名:Genecanthus bellus (Randall, 1975)
英名:Ornate Angelfish
分類:スズキ(Perciformes)目、キンチャクダイ(Pomacanthidae)科、タテジマヤッコ(Genicanthus)属

下記リンクが和名が付いたときの論文で、瀬尾先生と湯野川の共著です。
伊江島で採集された日本初記録のフカミヤッコ(新称)

伊江島で2個体目のフカミヤッコ

ゴールデンウィークの最終日、伊江島の北側のポイントで常連ゲストのIさんがフカミヤッコを発見しました。伊江島で2個体目のフカミヤッコの発見例です。

湯野川は通常のガイド中でしたので、その時はフカミヤッコを見ることはありませんでした。

伊江島で2個体目のフカミヤッコ

伊江島で2個体目のフカミヤッコ


後日、フカミヤッコのいたポイントに捜索に行きますが、発見できず。
また別の機会に、やっと見つけることが出来ました。
フカミヤッコは同じ場所に定着しているのではなく、数十mは移動しているようです。

日本でのフカミヤッコ発見例

フカミヤッコは今までに、久米島、慶良間諸島安室島、伊江島、鹿児島県硫黄島での目撃例があります。
久米島、ケラマ、伊江島での個体は小型のメスなので、フィリピンなど数多く住む地域から黒潮に乗って流れてきた、無効分散だと考えられていました。

ところが硫黄島では、オス・メス数個体のハーレムが目撃され、日本国内での繁殖の可能性も考えられるようになりました。

フカミヤッコ(メス)の顔は面白い

フカミヤッコ(メス)の顔は面白い


伊江島での2個体目のフカミヤッコはやはり黒潮に乗って流れてきたのか、もしかして伊江島のどこかにフカミヤッコのハーレムがあるのか、とても興味深いですね。

伊江島の北側の深場を何kmにもわたって探索するのは不可能です。でもどこかに、フカミヤッコのハーレムがあったら・・・ダイバーの夢は広がります。

情報追加

西表島ミスターサカナダイビングサービスの笠井さんによると、西表島での目撃情報もあるそうです。2017年5月14日にコメントを頂きました。サカナさん、ありがとうございます!

海外で見たフカミヤッコ

フカミヤッコは、インド洋東部から中・西部太平洋の熱帯域に分布しています。
伊江島で発見される以前の1990年代に、私たちはインド洋クリスマス島、セブ・マクタン島でフカミヤッコを見たことがあります。

クリスマス島には1週間滞在したのですが、時化のためにダイビングボートが出せず、タンクを借りてセルフで潜っているときに見付けました。
その後、Genecanthus bellusが記載されたキーリング諸島のココス島にも行ったのですが、ボートダイビングをしていたため、この魚は見ていません。

マクタン島は、以前伊江島ダイビングサービスのインストラクターをしてくれていたこんちゃんと湯野川(妻)が安いダイビングツアーで潜りに行きました。
その時のボートダイビングの移動中に、面白くてビーチエントリーできそうな地形を見つけておき、近くのリゾートも確認しました。
その後再び夫婦で目的のリゾートに行き、タンクレンタルだけして、セルフでダイビングして観察しました。
浅瀬から深場まで、本当に面白いポイントでした。

伊江島ダイビングサービスの昔のホームページで、その頃のことを書いたものがあります。
旧ホームページは見ることが出来ないので、再掲してみますね。
2003年9月の記事ですので、情報はその頃のものです。

愛しのオーネイト

さて今回の写真は、オーネイトエンジェルです。ヒレナガヤッコ属の魚で、雄と雌とで体の模様が全く違います。 ちなみに黄色いラインの方が、雄です。基本的には日本にいない魚ですが、稀に沖縄にも小型の雌が流れ着くようです。ただし、定着には至っていないようです。この魚には、最初にオーストラリアのクリスマス島で出会い、次にセブ島でも見ることが出来ました。

フカミヤッコのオス(クリスマス島)

フカミヤッコのオス(クリスマス島)


クリスマス島は、まさに絶海の孤島という感じの島です。特に時化ている時期だったこともあるのですが、ボートでは全くダイビング出来ませんでした。しかしこの時期のクリスマス島は、オカガニの一種のクリスマスクラブの産卵時期で、まさに島一面が赤いじゅうたんといった感で、カニに覆いつくされます。レンタカーでドライブをしたのですが、道路を歩くカニを無数に踏み潰す音で、とっても心が痛みました。宿泊したホテルのプールで産卵しているカニもいて、我慢できなかったのか、それとも間違えたのか、なにか哀愁を感じてしまいました。また、ホテルの庭には、夜になるとヤシガニがたくさん出てきて、部屋の玄関でこっちを威嚇するのもいて、甲殻類に占領された島のようでした。クリスマス島は、このカニの幼生を求めてやってくるジンベイザメで、有名になった(?)島ですが、ちょうどその時期に時化るのと、アクセスの悪さで、今はあまり話題になっていません。

フカミヤッコのメス(マクタン島)

フカミヤッコのメス(マクタン島)


ボートが出せなくて、毎日ビーチからダイビングをしていましたが、自分たちの好きな水深に行けて、良かったのかもしれません。ちなみに、ガイドはつきませんでした。島の周りは急峻で、あっというまに深くなっています。その落ち込みにちょっとした棚があり、そこにオーネイトエンジェルがいました。水深は60m前後で、次にセブ島で見た水深よりは深めだったのですが、初めて見たので、とても興奮したのを覚えています。他にはコリンズエンジェルもいたのですが、こいつがさらに深く、写真を撮るのが一苦労でした。しかし何年か後、パラオのブルーホールの水深15mでコリンズを見た時には、愕然としました。クリスマス島での苦労は、いったい何だったんだ。その当時のパラオは、まだマクロを持ってダイビングするダイバーがあまりいなくて、同じダイビングボートで一緒だった女性に、「えー、パラオでマクロですかあー」と言われ、心の中で、「ほっといてくれー」と、思っていました。

湯野川 恭